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批判的なフィードバックをうまく受け止める4つのコツ


私は、学生時代に初めて受けたデザインの授業中、恐ろしい光景を見た。クラスメイトのひとりが、全員の前で教授に自分の作品を破り捨てられたのだ。間もなく、彼はそのコースを辞めてしまった。

どんなに心の準備をしていたとしても、ネガティブなフィードバックを受け止めるのは辛いことだ。物事の良し悪しに関しては常に異なる意見があり、たとえその理由を冷静に、わかりやすく説明されたとしても、言われた方はこの上なく傷ついてしまうものだ。

しかし、自分の仕事にフィードバックをもらうことは、成長するための唯一の道である。否が応でも自分の考えやクリエイティブな意思決定を理性的に分析することの重要性、プライドを捨てることを教えてくれるからだ。

現在IDEOでインタラクション・デザイナーとして働き、かくいう私自身も、過去に苦い経験から身をもって学んだことがある。

以前、私は初めてあるフォントをデザインした。メッセージアプリ用に創ったもので、活字で(絵文字の代わりに)人々の感情を表現することを可能にするものだった。

どうしてもこの作品を早く世に出したかった私は、そのサンプルを、非常に名高く、私も心から尊敬するタイポグラファー(フォントや文字をデザインするデザイナー)に送ることにした。あまりにこの方が有名だったので(そしてそれに比べて自分の経験は浅かったため)最初は躊躇したのだが、友人たちから背中を押され、この作品を作った経緯も添えて、送ってみたのである。返事はあまり期待していなかった。

しかし、驚くことに数日後、非常に長い返信メールが届いた。私は、膨大な数のレンガを投げつけられたような衝撃を受けた。なぜなら、それはこれまで聞いたこともないような、手厳しいフィードバックだったからだ。

アライメントの問題から、一貫性のなさ、読みにくさなど、メールに書かれた批評は延々と続いた。それを読みながら私は、まるで自分のキャリアがスタートラインに立つ前に終わろうとしているような気分になった。

私は、自分の作品を自らの心や身体の一部のように思っている。そのため、作品へのフィードバックであっても、自分自身を否定されたように感じ、傷ついたのだ。

どんな批判にも耐えうる、鉄板のように分厚い面の皮を手に入れることができたらいいが、そんなことは不可能だ。よって私は、その後試行錯誤しながら、ネガティブなフィードバックをうまく受け止める(もしくは人に伝える)ために4つのマインドセット(心構え)を身につけた。私はデザイナーだが、これはきっと、どんな仕事に携わる人にも役立つはずだ。

1. 行動に繋がるフィードバックをもらう

もっとも役に立たないフィードバックは、「んー、あまり私の好みではないな」というようなものだ。人それぞれ好みは違う。しかし、ただ好き嫌いを言われても、そこから行動を起こすのは難しい。何かを発展させることも、改善することもできないだろう。

相手にフィードバックを求めるときは、好きか嫌いかではなく、建設的で、論理的根拠のある感想を聞こう。そして、直感的なコメントの代わりに、自分に対してできるだけたくさんの質問をしてもらうように話してみよう。


2. 相手とチームになった気持ちで聞く

フィードバックを一方的に受け止める側になるのではなく、そのプロセスに積極的に加わってみよう。批評を受けているその仕事は、仮に自分のものではないと想定し、自らの客観的な意見を言ってみるのだ。

そうすることで、「私個人」ではなく、仕事自体に意識を向けることができる。さらに、その仕事に対するフィードバックのプロセスを相手と共同で行うことで、自分の仕事を新たな視点から分析することができ、より良い方向へ改善することができるはずだ。

3. 感情的に受け止めない

できる限り、考慮すべき事柄から私的感情を取り除く。ネガティブなコメント一つ一つにとらわれるかわりに、自分の仕事を定義し達成するために必要な、バイアスのない指摘を求めよう。

たとえ相手が「私が好きなところは……、嫌いなところは……」といった表現を使ったとしても、それは個人に向けられているものではない。相手は仕事の背景にあるあなたの根本的な考えや行動を知ろうとしているだけなのだ。


4. 「答え」を求めない

フィードバックを経て仕事の課題が見えてくると、ついその課題に対する明確な解決策を求めたくなってしまうだろう。でも、それをしてしまうと、現状の課題をさらに掘り下げたり、新たな可能性を探る機会を逸してしまう。それよりも、自分自身で課題を解決しようとすることで、学び、成長するさらなる機会を手に入れることができる。

振り返ると、あのとき私を失意の底に突き落としたタイポグラファーは、実は素晴らしいアドバイスをしてくれたことに気づく(ただけなそうとしたなら、もっと極端に少ない言葉でできたはずだ)。それを私は、デザイナーである自分への個人攻撃だと受け止め、反応してしまった。

しかし、あのフィードバックのおかげで、私は自分の仕事に対して今までよりずっとクリティカルな視点を持つことができるようになり、他の人が気づかないような細部に至るまで気を配ったデザインをするようになった。

ネガティブなフィードバックを受けるのは確かに辛い。多くの時間と労力を費やした仕事をいきなり一刀両断されたら、打ちのめされるのも無理はない。

しかし、フィードバックをもらうことは、自分の仕事に改善のチャンスをくれるだけでなく、“自分自身”を改善することにもつながるのだ。そしてそれは、自分が誰かにフィードバックを与える番になったとき、強く実感することだろう。